むかしむかし、渡邊農園の畑と竹林の間に池がありました。
その池の横に大きなくるみの木があり、それはそれは・・・・存在感のある巨木です。
毎年秋には大量のくるみが実り、それをおばあちゃんは毎日拾っては、干すのが日課になってました。
青い実が茶色くなると「ポトン!」と地面に落ちてきます。
でもすぐには拾わないで茶色の実から種が見えるようなってから拾います。
隣の池で洗って、大きなザルにくるみを干してました。
1本の木から家族8人が1年間食べるくるみが採れるのです。。
お正月に向けて、おばあちゃんは納屋の入り口のコンクリートの上で、堅い木を敷いてくるみ割をしてました。
尖がってる方を上にして、手で、くるみを掴んで金づちで「ポン」と割ります。
強すぎると殻がぐしゃっと割れて実も粉々に・・・・、弱すぎると割れない!
でも、くるみは同じなものはひとつも無くて、そのくるみの大きさや形に合わせて、強弱つけて割って行きます。
これは職人技ですね(^^)
おばあちゃんは一定のリズムで割って行きます。
その横で、小さかった私はおばあちゃんの話を聞きながら、くるみが割れる様子を見るのが好きでした。
割ったくるみは先が尖っている彫刻刀のようなもので器用に取り出します。
スポっと、きれいに取れるとおばあちゃんは嬉しそうな笑顔になり、うまく取れなくてボロボロになると少し哀しそうでした。
くるみ割の作業を見てると
「はい。食べらいん」
と言って、私のての平にくるみを乗せてくれます。
ほんの少し、皮の苦みとくるみの旨みが広がり、とても美味しかったのを覚えてます。
お正月はすり鉢でくるみと砂糖を摺って作る、くるみ餅を食べます。
小さい頃の私はくるみ餅が苦手で、今で言うローストで食べるくるみの方が好きでした。
でも、おばあちゃんの笑顔が見たくて、くるみ餅をほうばってました。
今は、くるみの木も無くなり、くるみも拾わなくなりました。
叶わない夢ですが、おばあちゃんが作ったくるみ餅を今、食べたら感動するだろうなぁ~と
思う今日この頃。